また高齢者関係では、高齢化がさらに進むことにより年金財政が圧迫され、高齢者医療費や介護保険費が膨張する。その究極は、前回の末尾で紹介したケアマネージャーやホームヘルパーなどの慢性的不足により、「介護保険制度」そのものが崩壊する危険性である。
「未知の未知」と「既知の未知」を求めて
創造力は想像力を媒介にした様々な要因の「組み合わせ」から生まれる。これが本書の根本命題である。
現在の水準でいえば、アーリの「未知の未知」(unknown unknowns)や「既知の未知」(known unknowns)の探求にしても、手持ち資源をいかに組み合わせて、その問題をどのように追究するかというプロセスになる(アーリ、2016=2019:12)。
想像力と創造力のための4原則
その際に留意しておきたいことを「4原則」として本書「序章」の冒頭に置いた。
第一には、人種差別(racism)、男女差別(sexism)、年齢差別(ageism)を含むあらゆる差別には敏感でありたいとして、極力「○○主義」(ism)からは距離を置こうと心がけた。
第二には、データ分析や文章表現では正しい論理的な展開を行うとした。
第三としては、オリジナルなデータが入手できない場合はセカンドハンドのデータしか使えないが、それでも幅広く複数のデータを入手したいとまとめた。
第四には、問題解決に寄与できそうな研究成果が得られたら、そのままにしないで、政策情報への努力をして、それを公表したいとした。
ジレッタンティズムとスノビズムも回避する
さらに、学問として何をどう明らかにするかについての方法論が自覚されているか、その社会問題への解明意欲があるのかなどに気を付けて、可能なかぎり方法論的なジレッタンティズム(dilettantism)やスノビズム(snobbism)を避けようとした。
概念の洗練度が基準
社会調査を念頭に置いた私の社会学理論の検討には、取り上げた命題を表わすための概念がもつ洗練度と具体的指標として獲得されるデータとの親和性を、自分で納得がいくかどうかが基準になった。