輸出品にVATを課さないのは、その消費が国外で行われるためであり、仕入VATを還付するのは、国内消費税の負担を輸出品から完全に排除するためです。輸入にVATを課すのは、その消費が国内で行われるためです。

これは、国内で生産・消費される商品と、輸入されて国内で消費される商品との間で、税負担を中立にするための措置です。

むしろご指摘の通り、問題はアメリカの税制(特に売上税)が抱える構造的な課題にあります。

アメリカの売上税が輸出業者に負担をかける理由:

アメリカの売上税は主に州レベルで課される小売段階課税です。これは最終消費者への販売時に課税されるのが原則ですが、実際には州によって異なり、企業の仕入れ(原材料や設備など)に対しても一部課税される場合があります。

VATのように、生産・流通の各段階で支払った税金を次の段階で控除したり、輸出品については完全に還付したりする仕組みが十分に整備されていません。

このため、アメリカの輸出業者が製品を製造する過程で支払った州の売上税などがコストに「埋め込まれた」まま輸出されることになり、国際市場での価格競争力という点で不利になる側面があります。

アメリカがVATに切り替えるべきか?

論理的には、アメリカがVATを導入し、輸出品をゼロ税率に、輸入品にVATを課すようにすれば、他のVAT導入国との間で税制面での国境での不均衡は解消され、アメリカの輸出業者が抱える国内税負担の問題も解決されると考えられます。

国際貿易における消費税の扱いについては、VATの仕向地主義が国際的な標準となっています。

しかし、アメリカでVAT導入が実現しないのには、いくつかの大きな理由があります。

政治的なハードル: アメリカでは、連邦レベルでの広範な消費税(VAT)導入に対する政治的な抵抗が非常に強いです。「新たな大きな税金が導入される」「低所得者層に不利になる」といった根強い反対論があります。