既存の税制との整合性: 現在、売上税は州レベルの税金です。連邦政府がVATを導入した場合、州の税収にどう影響するか、あるいは州の売上税をどうするかなど、複雑な問題が生じます。
税の累進性に関する懸念: 消費税は一般的に、所得に占める消費の割合が高い低所得者層ほど負担率が高くなる「逆進性」を持つとされます。
これを緩和する措置(低所得者への還付金など)を設計することも可能ですが、政治的な議論になります。
文化的な背景: 「Taxation without representation(代表なくして課税なし)」以来の税に対する国民感情や、直接税(所得税など)を重視する傾向が強いことも影響している可能性があります。
結論として:
トランプ氏の「不当な恩恵」という主張は、VATの仕組みを自国(アメリカ)の税制と比較した際に、自国が不利になっていると感じることから来ていますが、VATの仕組みそのものは国際的な基準であり、輸出品から国内消費税を排除する合理的なものです。むしろ、アメリカの既存の税制が、輸出品に国内税負担を残してしまう点で、輸出競争力の観点からは不利な構造を持っていると言えます。
多くの経済学者は、アメリカがVATのような消費課税システムに移行すれば、国際貿易における税制の不均衡は解消され、アメリカの輸出業者にとって有利に働くと考えています。
しかし、それは税制の公平性や効率性といった経済的側面の議論であり、政治的、社会的な様々な要因が絡むため、現実的な政策決定としては非常に難しい課題となっています。
専門家が自分の主張を強化しようと故意にミスリードすることも
どの分野の専門家にも、自らの思考や主張はあり、その自分の主張に説得力をもたせようと努力をしています。
以前も、大御所の学者が自らの持論である大企業批判をするために、「大企業は税金を支払っていない」などと事実に反する著書を発刊したところ、それがベストセラーにあり、「大企業はズルい。だから自分たちが苦しいのだ」とそうであってほしい人の間に、真実のように広まっていきました。