ジョンソン政権のヴェトナム戦争への軍事介入の決定は、歴史の後知恵を使えば、強く非難できますが、同書を読むと、さまざまな政策決定者たちが、アナロジーに頼りながらも、高い不確実性のもと、さまざまな選択肢を深く考慮しながら意思決定を行ったことが理解できます。
ジョンソン政権のヴェトナム戦争に関する政策決定は、ケネディ政権のキューバ危機における意思決定に比べると、民主的で開かれたプロセスで行われたというより、閉鎖的であったために上手くいかなかったといわれることがあります。しかし、同書を読むと、必ずしも、そうとはいえない気がします。意思決定の開放・閉鎖性に関する分析は、「成功」した政策決定は民主的であり、「失敗」した政策決定は非民主的であったとする、トートロジーの「罠」にはまっている可能性がありそうです。
『戦争におけるアナロジー』は、ひと昔前の政治学の学術書ですが、今でも読む価値のある図書だと思います。
編集部より:この記事は「野口和彦(県女)のブログへようこそ」2025年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「野口和彦(県女)のブログへようこそ」をご覧ください。