失われた強みを取り戻す

 宮坂氏によると、ちょうど都庁を退職する世代の職員には「かつて汎用コンピュータで行政サービスを効率化するシステムのプログラムを書いていた」という人に出会うことが多いという。つまりかつてはシステムの内製を指向していたことになる。しかし職員主導のシステム開発から外部委託中心へと移行し、品質管理や継続的改善の視点が希薄化していた東京都の行政デジタル分野。東京都が内製化に舵を切ることは、この状況を根本から変革する戦略的転換点であり、成果が明確になるまでの時間は相応にあるだろう。

 しかしデジタル領域で失われていた“東京都の強み”を取り戻すことができれば、日本全体の公共サービス水準向上に貢献する潜在力を持っている。公共サービスの本質的価値向上と持続的進化を可能にする戦略的フレームワークとして、しばらくの間、GovTech東京の動向からは目が離せない。

(取材・文=本田雅一/ITジャーナリスト)