研究チームはこの発想を実装し、確率と頂点座標の勾配をリアルタイムで計算できる設計ツールを開発しました。

例えば、「コイン2枚を投げたときと同じ確率で表の枚数が出る3面体」や、「6面ダイス2個の合計と同じ確率分布を持つ11面体」(出目2~12が出る確率がちょうど2個サイコロの場合と一致する)をこのアルゴリズムで自動生成できることを示しています。

つまり多少形が複雑でも等確率化できるサイコロにでき、逆に好きなように確率を偏らせた不公平なサイコロも作れるわけです。

従来の職人芸的なバランス調整では到底見つけられないような形状のサイコロも、この方法なら発見できると研究者らは述べています。

実際、古典的なサイコロ設計では避ける「追加の不安定な面」をあえて持たせることで、見た目が自然なのに狙った確率でしか止まらないサイコロ形状など、ユニークな例が数多く示されました。

研究チームはこうして設計した「特殊サイコロ」を3Dプリンターで実際に造形し、物理的に転がして結果を検証しました。

例えば、ネコやアルマジロの立体モデルをベースに、それぞれ3つの安定面を持つサイコロに変形したものがあります。

そのほかドラゴン型やウサギ型など様々な形状で、公平・不公平含め思い通りの確率特性を持たせることに成功しました。

実験では、こうした造形サイコロを実際に300~1000回ほど繰り返し転がして統計を計測しました。

その結果、多くの試作品で理論計算どおりの確率分布に非常に近い実測結果が得られ、手法の有効性が確認されました。

例えば「2個のサイコロ合計を再現する11面体」を転がした実験でも、出目2~12の出現頻度が期待値にほぼ合致したとのことです。

計算による事前予測が、そのまま現実のサイコロにも適用できたわけです。

ただし、転がす際にあまり強くバウンドすると、跳ね方など運動量の影響で予測からズレる場合も観察されました。