9. インカの耐震石積み:地震の力を巧みに受け流す、驚異の建築技術

古代の驚異「ロストテクノロジー」10選!…自己修復コンクリートから虹色の杯まで、失われた超技術の秘密
(画像=出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0),『TOCANA』より 引用)

 ペルーのマチュピチュやサクサイワマンといったインカ帝国の遺跡で見られる精巧な石積みは、地震多発地帯における驚くべき耐震技術の証です。インカの石工たちは、花崗岩や安山岩といった硬い石材を、まるでパズルのように複雑な形状に加工し、わずか1~2ミリメートルという驚異的な精度で組み上げていました。特に注目すべきは、石材の接合面が凸凹にかみ合うように作られている点です。これにより、マグニチュード7.5クラスの地震が発生したと仮定したシミュレーションでは、個々の石材が最大3ミリメートルほど横方向にずれ動いたり回転したりすることで、地震のエネルギーを効果的に吸収・分散し、構造全体の倒壊を防ぐことが示されています。また、石材の表面を滑らかに研磨することで、接触圧力を均一にし、応力集中を避ける工夫もなされていました。

 この数千年前に確立された地震に強い設計思想は、現代の建築工学においても、レーザースキャンやロボット加工技術、さらには光ファイバーセンサーなどを組み合わせることで再現が試みられ、その有効性が再評価されています。