4. エジプトのファイアンス:世界最古のガラス状装飾品、その鮮やかな色彩の謎

古代の驚異「ロストテクノロジー」10選!…自己修復コンクリートから虹色の杯まで、失われた超技術の秘密
(画像=By Anonymous (Egypt) – Walters Art Museum: Home page Info about artwork, Public Domain, Link,『TOCANA』より 引用)

釉薬をかけたセラミック(陶磁器)よりも遥かに古い歴史を持つエジプトのファイアンスは、石英の粉末を主成分とし、これにアルカリ性の融剤(天然炭酸ソーダや植物灰)と銅をベースとした着色剤を混ぜて焼き固めたものです。800℃から950℃という高温で焼成する過程で、表面のごく薄い層が溶融し、自己ガラス化することで、銅ケイ酸塩を豊富に含むガラス質の被膜が形成されます。これが、ファイアンス特有の鮮やかなトルコ石色や深青色の輝きを生み出すのです。焼成時の窯の中の酸素濃度をわずかに変化させるだけで、釉薬の不透明度や色の飽和度が大きく変わるという、非常に繊細な技術であったことが実験で再現されています。

 現代の化学者たちは、この古代技術を参考に、環境負荷の少ない新たな融剤の開発や、微細な層構造を制御することでグラデーションを持つタイルなど、現代建築や芸術への応用を目指しています。