驚くべきことに、患者の22.3%が薬のおかげで睡眠時無呼吸症候群が事実上解消したことになります。
これは睡眠時無呼吸症候群治療薬として極めて有望な成果です。
試験の主要評価項目であるAHI改善効果は、約1か月間の第2相試験(MARIPOSA試験)で示されたデータと同程度であり、今回の長期試験でそれが再現・確認された形です。
安全性の面でも良好な結果が得られました。
AD109投与群において薬剤に関連する重篤な副作用は一件も報告されず、全体として忍容性は高く、副作用は以前の短期試験で見られたものと同様の範囲に収まったといいます。
具体的な副作用の詳細はプレス発表では明らかにされていませんが、同種の薬剤に共通する軽度の血圧・心拍数上昇や口の渇き、一時的な不眠感などが一部で見られた可能性があります。
しかしこれらは想定内で深刻な問題とはならず、6か月の長期試験でも多くの患者が継続できたことから、安全性はおおむね確保されていると考えられます。
3:睡眠医療に新時代
3-1:専門家も賞賛
今回の成果に対し、睡眠医療の専門家や患者支援団体からは期待の声が上がっています。
SynAIRgy試験の主席研究者を務めた米ピッツバーグ大学医学部のパトリック・ストローロ医師は声明で「今回の第3相試験の結果は非常に心強いもので、睡眠時無呼吸症候群治療に久しく欠けていたイノベーションがもたらされる可能性を示している」と評価しました。
ストローロ医師は「長年、睡眠時無呼吸症候群の進歩は停滞し、多くの患者が持続可能な治療法を得られずにいました。SynAIRgyの結果は、もし承認されればAD109が睡眠時無呼吸症候群の気道閉塞という神経筋の根本原因に作用する画期的な経口薬として幅広い患者層に新たな治療選択肢を提供しうることを示唆しています」と述べ、治療パラダイムを変革し得る潜在力に太鼓判を押しました。
また、米国の患者支援団体「睡眠時無呼吸パートナーズ」代表のモニカ・ランパリリ氏も「睡眠時無呼吸症候群は男女あらゆる年代・人種・体格の人々に影響を及ぼす深刻かつ一般的な慢性疾患で、本来公衆衛生上の最優先事項として扱われるべきです。にもかかわらず治療の選択肢は長らく限られており、新たな治療法は待ち望まれていました。今回示されたSynAIRgyの結果は、経口療法が視野に入ったことで患者が自分の睡眠時無呼吸症候群をより手軽に管理し、人生を取り戻せるかもしれないという希望を与えるものです」とコメントしています。