この規模の事業者であれば、業種ごとのみなし仕入率を用いた「簡易課税」を選択するケースが多いでしょう。
一般的には、簡易課税を選択するのは、その事務負担の軽減だけでなく、みなし仕入率で計算したほうが消費税の納税が少なくて済むからです。
つまり、簡易課税は、本来納税すべき金額より少ない納税で済ますことができる。要するに、簡易課税にも益税が生じていたわけです。
益税は、税率が高くなればなるほど大きくなります。
逆に、消費税率が引き下げられたとなれば、簡易課税による益税額も減るので、簡易課税を選択する事業者の手取りは消費税率引き下げにより減るということです。
念のため計算してみましょう。上記の事業者がサービス業(みなし仕入率50%)の場合です。
消費税10% 消費税5% 差引
売上高 550万円 525万円 ▲25万円
仕入等 110万円 105万円 ▲5万円
差引 440万円 420万円 ▲20万円
受取消費税 50万円 25万円 ▲25万円
支払消費税 25万円 12.5万円 ▲12.5万円
納税額 25万円 12.5万円 ▲12.5万円
手取り 415万円 407.5万円 ▲7.5万円
ほら、消費税が5%に減税されても、簡易課税を選択していると、その事業者の手取りは7.5万円(20万円ー12.5万円)だけ減るじゃないですか。
ホントに景気が加熱したら仕入価格も跳ね上がる
いや、消費税を減税すれば、景気が良くなって、売上が増えることを忘れているだろ。
それは、確かにあるとは思いますよ。
ただ、消費税率を下げるとなれば、その前で買い控えは起きるはずですし、また税率を上げるとなれば、駆け込み需要はあるものの、その後には、その反動で一気に需要はなくなる。
ですから、消費税の減税で、どれだけ、トータルの売上が増えるのかも疑問です。
もはや、どの業界でも人手不足の状況であり、賃上げも実施されていることから、実は日本はそこそこ好景気なんだということです。