彼は「AI技術は1〜2年後にはさらに成長するでしょうから、別の仕事をやろうと思っています」と語り、業界からの撤退を決意しました。

中国メディアによると、ここ数ヶ月で彼のように職を失うイラストレーターが急増しているとのことです。

フリーのゲームイラストレーターであるアンバー・ユーさんも、2023年2月以降プロモーション用ビジュアルの依頼が激減したと証言しています。

彼女はかつて1枚あたり3000〜7000元(約5.8万〜13.6万円)の報酬を得て一週間かけて丁寧に描いていましたが、今では同様の絵がAIで数秒で生成できてしまいます。

結果、人間に任される仕事は「AIが作った絵の微修正」程度になり、報酬も以前の10分の1ほどに落ち込んでいるといいます。

3:創造性を評価しない業界側の問題点

3:創造性を評価しない業界側の問題点
3:創造性を評価しない業界側の問題点 / Credit:clip studio . 川勝康弘

このように研究データからの数値と現場の声の両方で、AIにより仕事枠が次々に奪われていることが伝わってきます。

初期においてAI絵師を名乗ることは従来のアーティストたちからは嘲笑の対象となっていました。

「AI絵師は何も生み出せない素人たちが自称しているだけのもの」という意識があったからです。

しかしここ数年で、AI絵師たちが人間絵師たちの職を奪い始めると、そのような笑い声は急速に消え去っていきました。

そして現在ではコメントの傾向が嘲りから憎悪や焦り、恐怖へとシフトしつつあります。

しかし何より衝撃的なのは、雇う側にも意識の変化が現れ始めており、大手スタジオですら「AI絵師」やを募集する傾向が現れつつある点です。

やや厳しい声に耳を傾ければ、真に創造的なものや革新的なものに対して、業界全体の元々の需要が必ずしも高くなかったという指摘もみられました。

特にアニメやマンガなどキャラクター分野においては、流行りのスタイルや流行りの絵柄、テンプレート的な顔立ち(キャラごとの区別ができない目とほぼ点である鼻や口)など、AIの付け入りやすい構造があったわけです。