実際、ファンやクライアントが「あなたに頼みたい」と思うような唯一無二のスタイルはAIには真似できない強みです。

そうした付加価値を磨くことで差別化を図ったり、逆にAIでは描けないニッチなジャンル(例:極めて抽象的な発想や細部への強いこだわりが求められる作品)に活路を見出す人もいます。

しかしこのような絵師の個人レベルの適応は進んでも、未来への不安は尽きません。

生成AIによるクリエーターへのダメージは今後どうなるのでしょうか?

4:ダメージは落ち着くのか、それとも加速するのか

4:ダメージは落ち着くのか、それとも加速するのか
4:ダメージは落ち着くのか、それとも加速するのか / Credit:clip studio . 川勝康弘

では、今後この傾向は落ち着いていくのでしょうか?

それともさらに加速していくのでしょうか?

専門家や業界団体の分析から、将来の見通しを探ります。

まず全業種的レベルでは楽観的な声が聞こえてきます。

国際労働機関(ILO)の研究では「完全に仕事が消えてしまうケースは一部に留まり、多くの職業ではAIが業務の一部を自動化しつつ人間を補完する形になる」と予測されています。

ILOの世界分析によれば、現在の生成AI技術で直接自動化されるリスクがある全体の約2~4%程度(最大でも5%未満)にとどまり、“完全にAIに取って代わられる”よりも“AIを使いこなせる人が有利になる”方向が強いとされています。

実際、生成AIの導入に伴い企業内で新しい職種(例えば「プロンプトエンジニア」など)が生まれていることも報告されており、テクノロジーに適応することで生き残る道もあると考えられています。

この見方では、クリエイティブ職もAIとの協働によって新たな役割が生まれたり、効率化によって人間にしかできない高付加価値な仕事に専念できるようになる可能性が指摘されます。

実際AIの普及によってクリエイティブ職の雇用枠がゼロになるわけではない……という点については事実でしょう。