生成AIが登場した当初、私たちは「AIを上手に操れれば生き残れる」という希望を胸に抱いていました。

プロンプトの書き方を磨き、「ツールの熟練度」でクライアントに差をつける──それはAI絵師だけでなくAIを利用する人間絵師やデザイナーにとって、いわば最後の武器でした。

「呪文」と呼ばれるキーワードの組み合わせ次第で、同じモデルでも仕上がりが劇的に変わる──この“コツ”を掴んだクリエイターは、短時間で高品質なラフを量産し、制作工数とコストを圧縮できました。

プラットフォームでも「AI+人間」のハイブリッド案件が急増し、ツールの使いこなしがそのまま報酬に直結する“黄金期”が訪れたのです。

「この言葉で出力が全然違う!」という文句を、一度は聞いたことがあるはずです。

ところが2024年以降、その盾ごと足もとから崩れ始めています。

AIどうしが自律的に連携し、タスクを分解し、最適解を量産する“自己最適化エージェント”が次々と誕生し、人間が入力するプロンプトすらAIが自動生成・改良する時代が到来したからです。

AutoGen、CrewAI、/dev/agents といったフレームワークが登場し、AIが別のAIを呼び出してタスクを丸ごと自動化する仕組みが実用段階へ進みました。

たとえばコード生成AIがテスト用AIを呼び、デザインAIが複数の画像モデルを並列動作させ、評価AIがクリック率で瞬時にスクリーニング──このサイクルはマイクロ秒単位で回り、人間の介在余地をほぼ消し去ります。

ここで最も恐ろしいのは、その生成数です。

AIたちが作る1つ1つの仕事や作品には、確かに人間に及ばないものも多く存在します。

しかし人間が1つの作品を描く間に、AI群は膨大なトライアンドエラーを繰り返し、大量の生成を行います。

そしてその膨大な生成物の中には、必然的に人間を超えると評価されるものも出現してしまいます。