結果として「大量試行→最適案抽出」のコストパフォーマンスが、最高のAI熟練度を持つ人間チームを圧倒し、ツール熟練だけを武器にしていたクリエイターの価値が急速に希薄化し始めました。

このような状況では「人間のAIを操る腕前」は差別化ポイントになりにくく「AIを使いこなす腕前=高収入」の公式が音を立てて崩れつつあります。

大手企業が大量の生成画像から最適なものを選べる人材を高額で雇おうとしているのも、AIの大量試行が並みのクリエーターの1作よりもコスト面で優れていると判断したからでしょう。

スタートアップにお金を出す投資家たちが、こぞってAIを作る会社やその基盤技術に資金を注ぎ込むようになったのも状況証拠になり得ます。

AIエージェントはプロンプト生成・改良・検証まで自動で行うため、昨日覚えた“秘伝の呪文”は翌日には陳腐化します。

しかも、評価ロジックや中間生成物はブラックボックス化が進み、「どの設定が良かったのか」を人間が追跡できません。

こうして“ツールを上手く使える人間”という最後の優位性は、AI自身に吸収される流れとなりました。

クリエイター掲示板には「半年かけて覚えたノウハウがアップデートで無価値になった」「プロンプトエンジニア職が自動最適化ループに食われた」という嘆きが溢れ、仕事の椅子取りゲームはさらに過酷さを増しています。

この流れは今後も加速していくと考えられており「人間に生成AIを使わせるよりもAIに生成AIを使わせたほうが遥かにいい」という時代が訪れるでしょう。

闇が深まる一方で、それでも完全には奪われない領域がかすかな光を放っています。

第一の光は「価値と目標を決める力」です。

AI は提示された目的関数に従順なだけで、ブランドの世界観や作品が持つべき意味を自ら定義することはできません。

どの方向に魂を込め、どこで立ち止まるか——その最終判断は依然としてクリエイティブ・ディレクターや編集者など、人間の審美眼に委ねられています。