感じ方には個人差があり、「ゲームみたいであまり響かなかった」という人もいるかもしれません。
VRは決して万能薬ではなく、あくまで人間の心に働きかける一手段です。
だからこそ、従来の対面の対話や教育と組み合わせ、VRの強み(臨場感・没入感)を最大限活かすことが重要になります。
とはいえ、VRがもたらすインパクトは計り知れません。
20世紀には映像や書物を通じて他者の人生を追体験することがせいぜいでしたが、21世紀の今、私たちは文字通り「他人の身体を着て」歩くことが可能になりました。
冒頭の男性たちが見せた驚きと共感のように、VRは私たちに新しい視点と共感の科学を届けてくれます。
それは差別や暴力のない社会への第一歩かもしれません。
技術が進歩した未来、私たちはより容易に他者の痛みを想像できるようになっていることでしょう。
VRは単なる娯楽に留まらず、人間理解のツールとして輝きを増しているのです。
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元論文
Walking in Her Shoes: Virtual Reality Increases Male Sensitivity to Catcalling Experiences
https://doi.org/10.31234/osf.io/ga3he_v1
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部