あなたがVRの中で異性の体を手に入れ、自分とは違う性別として生活してみたら、一体どんな気分になるでしょうか?

鏡に映る自分の姿も、周囲からの扱われ方もガラリと変わります。

そのとき私たちの心にはどんな変化が起こるのか――この不思議な問いに、近年の研究が少しずつ答えを出し始めています。

たとえば夜の地下鉄ホーム、薄暗い明かりの中で電車を待つあなた。

突然、背後から男たちの笑い声が聞こえ「可愛いねーキミ」と軽薄な声が投げかけられ「ヒューヒュー」と口笛が響いたらどう感じるでしょうか。

このような男性からの呼びかけはキャットコーリングと呼ばれており、女性にとっては男性から受ける代表的な不快な言動とされています。

日本語にはなかなか対応する表現がないのですが、セクハラの一種で「性的なヤジ」あるいは「ストリートハラスメント」という言葉が近いでしょう。

ですがイタリアのボローニャ大学(UNIBO)で行われた研究によって、VR技術の力を借りて性転換をした男性たちが女性になりきって、このキャットコーリングを体験することを可能にしました。

VRで女性に性転換した場合、男性はキャットコーリングをどのように感じるのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年4月15日に『PsyArXiv』にて発表されました。

目次

  • 異性の身体を体験すると自己認識はどう変わる?
  • VRで異性になりきったら心に何が起きる?
  • VR性転換を教育・研修・治療に活かす

異性の身体を体験すると自己認識はどう変わる?

異性の身体を体験すると自己認識はどう変わる?
異性の身体を体験すると自己認識はどう変わる? / a/Credit:Chiara Lucifora et al . PsyArXiv (2025)

街中で女性が浴びる痴漢まがいのヤジや口笛――いわゆるキャットコーリングは、決して他人事ではありません。

例えばある調査では、女性が日常で遭遇する不快な状況の42%が言葉によるハラスメントだったと報告されています。