今回の結果はあくまでインサイト着陸地点付近の観測データから得られたものであり、火星全体で同様の現象が起きているかどうかは未知数です。

研究チームは、将来より高度な地震計を搭載したミッションを火星に送り、複数の観測点で火震を測定することで、この地下水の広がりや規模を検証できるだろうと述べています。

実際、火星に複数の地震計ネットワークがあれば、今回と同じ手法で他地域の地下構造も調べることができ、地下水が普遍的に存在するかを確認できるでしょう。

また、将来的には火星の地下深部まで掘削して直接水を探る計画や、軌道上からレーダーで地下の構造をマッピングする試みが行われる可能性もあります。

しかしいずれにせよ、今回の発見が火星探査に新たな目標をもたらしたことは確かです。

地表は乾ききった世界に見える火星ですが、その地下深くには“隠れた海”とも言うべき広大な水の貯蔵庫が横たわっているのかもしれません。

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元論文

Seismic evidence of liquid water at the base of Mars’ upper crust
https://doi.org/10.1093/nsr/nwaf166

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部