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10. 差別の事例。カルトとは本来、キリスト教内の異端問題だった。しかしカルト反対やカルト撲滅が大衆化して、差別を「対策」「正義」と言い張れる分野になった。引用した漫画では、朝鮮半島の民族と文化蔑視、馬鹿チョンという差別語を使用している。これが大衆化した反カルトの本質である。

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11. 報道の議題設定。このとき利用されたのがオピニオンリーダーや弁護士らによるカルト排除論。ここからマスコミ世論による虚像としての「モンスター化した統一教会像」が生まれ、大衆が興奮して追随しただけでなく、政治家も自らの正当性を失うまいと動いた。オピニオンリーダーや弁護士らは、大衆の興奮に対して、怒りの対象を示唆した。この循環が繰り返された。

司法もまた、正当性を失うまいとした政治家、あるいはイデオロギーへの加担によって、自らの正当性を主張するように動いたのが解散命令請求だった。

司法って何だ? 憲法って何だ?

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報道と大衆的反カルトがもたらしたもの

時間の制約からシンポジウムで語れなかったことや、富山市を中心に広域的に教会を統括する鄭日權大教会長の発言を紹介する。

報道と大衆的反カルト

まず報道と大衆的反カルトがもたらした差別の正当化について。

大衆的な反カルトはサブカル特有の斜に構えた態度、異なる者へのおちょくりを核として、安全圏から目新しい宗教をあげつらってきた。出自を問う同和差別、職業差別、障害者差別、ハンセン病患者などへの疾病差別、人種差別などが堂々と行えなくなった現代において、「差別することがどうしても必要な人たち」にとって差別を「対策」と言いくるめられる分野として登場したといってよい。

大衆的な反カルトは自らの思い込みと、宗教へのパブリックイメージをそのまま増大させるだけで、宗教と信徒の実像については取材も検証もしなかった。たとえば教団等の施設に忍び込むパフォーマンスを演じても、教団またはさまざまな信徒を取材していないのである。彼らはジャーナリストでも報道機関でもないが、これが議題設定であり、対象をモンスター化することだけが目的だったのだ。