彼らは女子大学生を対象に、性的な問題について話し合う架空のディスカッショングループに参加するための試験として、一部の女性(実験群)に恥ずかしい官能小説の朗読させるというかなり恥ずかしい課題を課し、別の女性(対照群)には性的な意味を含む単語を数語読み上げるだけの軽い課題を課しました。
その後、全員に動物の性行動についての録音された非常に退屈な議論を聞かせました。(これはわざとつまらない無意味な講義を聞かせています)
そして、その後にこの議論に参加した感想を参加者たちから集めました。
すると単語を読み上げただけの女性たちは、つまらなかった、退屈だった、参加しなければよかった、という感想が出たのに対し、なんと恥ずかしい試験を受けた女性たちは「有意義だった」「この議論には価値があった」と高く評価したのです。
これは参加に苦労や覚悟が伴うと、参加したことが失敗だったと感じる状況でも、人はその事実を無意識に認めず、その不協和を解消するために現実を歪んで解釈してしまうことを示しています。
これはビジネスにおいて会社の上層部が誤った経営判断を訂正できずに突き進んでしまったり、恋愛において恋人が問題のある人間だとわかっても離れられなかったり、投資やギャンブルにおいて引き際を見極められないなどの問題にも通じていると考えられます。
現代ネット社会にも通じる心理──アンチの存在が信者の結束を強める
この研究は現代では主流の心理学研究の多くが発表前だった70年前のものです。
そのため、当時は認知的不協和理論の枠組みのみでこの現象が説明されましたが、現在ではフェスティンガーのこの興味深い観察報告について、より多層的な解釈が可能になっています。
まず注目されているのが社会的アイデンティティ理論(Social Identity Theory)です。これは1970年代にイギリスの社会心理学者ヘンリー・タジフェルらによって提唱されました。