IOCはアスリートに禁煙を義務付けているわけではないが、そもそもタバコはドーピングの対象ではない。喫煙がアスリートのパフォーマンスを下げることから使用が推奨されていないだけであって、「不当な薬物的パフォーマンスの向上」を監視するドーピング調査の本来の理念とは全く異なるからだ。その一方、日本体操協会のように行動規範の中で「20歳以上であっても喫煙は禁止する」としている例もある。
昭和世代のプロ野球選手がベンチ裏で喫煙している様子がテレビ中継で映り込んでしまうことがよくあったが、持久力が問われるサッカー選手の喫煙率の高さには驚かされる結果だ。

パフォーマンスへの悪影響やクラブの対応
喫煙は肺機能や持久力の低下を招くため、パフォーマンスへの悪影響を及ぼす可能性が高い。特に現代サッカーは高強度の運動量を要求される。サッカー選手に限らず一般人に関しても、健康を考えればタバコは“百害あって一利なし”だ。
また、人気選手の喫煙が公になると、クラブのイメージやスポンサーへの影響が問題視される。ファンから批判を浴びることも少なくない。2012年、松本山雅の監督に就任した反町康治氏(現清水エスパルスGM)は所属選手に禁煙令を出し、これに違反したベテランFW木島良輔に1週間の謹慎処分を科した。監督やGMの考え方にもよるが、喫煙を禁止しているJクラブも存在する。喫煙に寛容なプロ野球界ですら、原辰徳前監督時代の読売ジャイアンツでも禁煙令が出されていた。
こうした試みは、選手の健康リスクや引退後の生活も考慮した取り決めであって、契約条項の中に喫煙の制限を設ける場合もある。しかしながら、紙タバコではなくニコチンガムや電子タバコなどに手を出す選手も増えている。
選手自身が喫煙のリスクをどう捉えるか
では健康を犠牲にしてまで、サッカー選手はなぜ喫煙するのか。選手は試合やメディアのプレッシャーに晒されている。タバコが一時的なリラックス手段になる場合があるだろう。万が一、違法薬物に手を出してドーピング検査に引っ掛かるよりは、まだマシという考え方もできる。