研究者たちによると、当初は半信半疑だったそうですが、複数の試験データが同様の傾向を示したために確信へと変わったといいます。

こうして明らかになったのは、特定の市販ナイロン糸が、実際の海の中でも想像以上に早いスピードで分解されているという衝撃的な事実です。

これはゴーストギアとして長年海に残ると思われていた釣り糸が、条件次第では自然界に還る可能性を示すものであり、漁業プラスチック問題を解決する糸口になるかもしれません。

ゴーストギア終焉への道筋

ゴーストギア終焉への道筋
ゴーストギア終焉への道筋 / 漁具にからまっているウミガメの悲しい画像。しかしナイロンが溶けやすいのならば改良によってより安全な素材になれるかもしれない/Credit:wikipedia

今回の研究結果は、「ナイロン=海では分解しない」としてきた従来の通説を根本から揺るがすものでした。

教科書レベルで長年言われてきた常識に対して、「実は一部のナイロン釣り糸は海の中でも、代表的な生分解性素材であるセルロースと同等に分解されていた」という事実が示されたのです。

これは、ゴーストギア(海中や海底に捨てられた漁具)やマイクロプラスチック汚染が深刻化するなかで、大きなブレークスルーになるかもしれません。

なぜ海の中で分解されるナイロン釣り糸が存在するのか、今後さらに詳しく解明が進めば、いっそう実用化への道が開けると考えられます。

すでに研究チームは、釣り糸の配合比率や構造のちょっとした違いが、微生物による分解の進みやすさに大きく関係しているのではないかと見ています。

たとえば海中に生息するバクテリアや菌類が、ナイロンの特定部分を分解できる酵素を持っている可能性があり、今後の研究でそこが明らかになれば、漁網や釣り糸の改良を加速できると期待されています。

さらに、今回の発見は「すでに市販されている製品」にも当てはまるという点が見逃せません。

つまり、わざわざ特別な新素材を開発しなくても、一定の配合や製造法によっては、環境に優しい釣り糸が十分に普及する可能性があるのです。