これは製造コストや大量生産の面でも大きなメリットとなり得ます。

もちろん、どのブランドや製品がどれだけ分解されやすいのかは、さらなる検証が必要ですが、そうした“選択肢”が既に市場に存在するだけでも一歩前進といえます。

ナイロンが生分解される仕組みを予想

①微生物による酵素的アタック

1970年代後半に見つかった事例として、特定のバクテリアが「ナイロン分解酵素(通称:ナイロナーゼ)」をもつことが知られています。

この酵素はナイロン(とくにナイロン6に由来するモノマー)を加水分解し、より小さな分子に分解する働きを持ちます。

海洋には多種多様な微生物がおり、そのなかの一部が類似の酵素を生産している可能性があります。

②共重合体の比率による結晶性(固さ・構造)の変化

ナイロン6とナイロン6,6を混ぜ合わせた「共重合体」では、その割合によって分子鎖の並び方や結晶構造が微妙に変わります。

一般に、ナイロンは分子がきっちり並んだ「結晶領域」が大きいほど水分や酵素が入り込みにくく、分解されにくいと考えられています。

一方、今回の研究で生分解性が確認された共重合体は、結晶領域が適度に乱されていて、水や微生物の酵素がアミド結合にアプローチしやすい構造になっていた可能性があります。

③海洋環境がもたらす局所的な“酸化・加水分解”要因

海水には塩分や多様な微生物、さらにはプランクトン由来の酵素などが存在し、陸上とは違う化学的・生物学的反応が起こります。

共重合体の比率が合ったナイロン釣り糸は、海水や微生物との接触面で徐々にアミド結合が切断され、そこから内部に水や酵素が浸透しやすくなる“ほころび”が生じている可能性があります。

④表面の“攻撃”から内部へ広がる分解の進行

釣り糸の表面は凹凸が生じやすく、そこにバクテリアや菌類が付着しやすい環境が形成されます。

表面から分解が始まり、傷や穴が徐々に拡大していくことで、結果的に結び目の強度低下や見た目の劣化が進んでいくと考えられます。