・自己利益のための悪用: 炭素中立を強調することで、薪ストーブ業界は製品の販売促進を図り、法的規制や社会的な批判を回避しようとしています。これは科学的根拠よりも商業的利益を優先する姿勢であり、周辺住民の健康や環境への配慮を欠いた利己的な行動と言えます。特に、欧米では木材燃焼暖房が大気汚染源として問題視され、使用制限が強化されている中、日本で同様の規制が遅れていることを利用している点は、倫理的にも問題があります。

  1. 大気汚染や健康被害のリスクを誠実に説明しているか

    日本の薪ストーブ業界が大気汚染や健康被害のリスクをどの程度誠実に説明しているかを評価すると、以下の点から不十分であると考えられます。

    ・リスクの軽視または無視: 業界団体や販売業者のウェブサイト、広告では、「人にも環境にも優しい」「自然と調和した暖房」といった肯定的なメッセージが目立ちます。しかし、木材燃焼によるPM2.5やベンゾピレンなどの発がん性物質の排出が、喘息、肺がん、心血管疾患などの健康被害を引き起こすことは、国内外の多数の研究で証明されています(例: WHOの推計では、大気汚染により年間700万人が死亡)。これらのリスクが具体的に記載されることは稀であり、消費者に誤った安心感を与えている可能性があります。

    ・欧米豪の規制動向との乖離: 欧米豪諸国では、薪ストーブや暖炉の使用が大気汚染と健康被害の原因として認識され、規制が強化されています。例えば、デンマークのコペンハーゲンでは木材燃焼暖房が禁止され、オーストラリアのニューサウスウェールズ州でも環境保護庁が有害性を警告しています。一方、日本の業界はこうした国際的な潮流をほとんど反映せず、「欧米で愛されている暖房」とポジティブなイメージのみを強調する傾向があります。この情報格差は、消費者に対する誠実さの欠如を示しています。

    ・近隣住民への影響の無視: 薪ストーブの煙は使用者だけでなく、周辺住民にも影響を及ぼします。住宅密集地での使用が増えれば、地域全体の空気質が悪化し、特に呼吸器疾患を持つ人や子供、高齢者に深刻な健康リスクをもたらします。業界がこの点を積極的に啓蒙せず、「個人の趣味」や「ライフスタイル」として美化する姿勢は、社会的責任を果たしているとは言えません。

  2. 業界団体の主張に対する科学的視点からの問題点