以下、日本の薪ストーブ業界が薪ストーブの煙による大気汚染と健康被害の問題をどのように考えているのかを客観的に明らかにするため、ご質問の項目に沿って回答します。なお、現在の日付は2025年3月15日であり、最新の情報に基づいた分析を心がけますが、具体的な業界団体の公式声明や文献が手元にない場合は、一般的に知られている傾向や公開情報をもとに推察し、科学的視点から批判的に検討します。

1. 炭素中立を恣意的かつ極度に誇張し利用する姿勢の問題点

薪ストーブ業界、特に日本暖炉ストーブ協会や関連業者が「カーボンニュートラル」を掲げて薪ストーブを推進する姿勢は、科学的根拠や国際的な文脈を無視した恣意的な解釈に基づいていると指摘されています。以下にその問題点を詳説します。

・炭素中立の理論的限界: 木材燃焼がカーボンニュートラルとされる根拠は、樹木が成長過程で吸収した二酸化炭素(CO2)が燃焼時に放出されるため、理論上「正味ゼロ」になるというものです。しかし、この前提は、木材が持続可能な森林管理のもとで伐採され、再生が保証される場合に限られます。

実際には、薪ストーブ用の木材供給が必ずしも厳格な管理下にあるとは限らず、森林破壊や生態系への影響が無視されがちです。さらに、燃焼時に発生するCO2以外の有害物質(微小粒子状物質PM2.5、一酸化炭素、揮発性有機化合物など)は炭素中立の議論とは無関係であり、大気汚染の原因となります。業界がこれを意図的に隠してしまう点は、誤解を招くグリーンウォッシュに該当します。

・発電用途限定の誤用: バイオマスによる炭素中立は、主に大規模なバイオマス発電所での利用を想定しており、高効率な排気処理装置を備えた施設で管理されるべきものです。

一方、家庭用薪ストーブは排煙をろ過する技術がほとんどなく、未処理のまま有害物質を大気中に放出します。SDGs(持続可能な開発目標)の観点では、Goal 3(健康と福祉)やGoal 11(持続可能な都市)において、大気汚染の削減が明示されており、家庭での木材燃焼はむしろ削減対象とされるべきです。業界がこれを逆手に取り、「SDGsに貢献する」と喧伝することは、国際的な目標の趣旨を歪曲する行為です。