こうして比べると、「戸籍制度」と一口に言っても昔と今とでは中身が全然違うことが分かりますよね。かつての戸籍は家長を頂点とする家族制度そのものでしたが、今の戸籍は個人個人の情報を集めた行政システムです。「戸籍制度が壊れる!」と言う人は、もしかしたら戦前の家制度的な戸籍を念頭に置いているのかもしれません。でも、そのような戸籍はとっくに過去のものなのです。そういう意味では戦前の家制度的な戸籍は消失しています。

家族全員が同じ姓かどうかは本質ではなく、誰が誰と親子なのか、誰と誰が夫婦なのかを正確に登録し公証することが目的なのです。極端な話、全員が同じ苗字かどうかは戸籍制度の核ではないんですね。

選択的夫婦別姓は戸籍制度を壊さない

戸籍制度の本質は姓の統一ではなく、 戸籍はあくまで家族関係を登録するシステムです。極端な話、夫と妻の姓が同じかどうかは戸籍のデータ項目の一つにすぎません。親子・夫婦関係さえ正しく記録されていれば、姓が違っても家族であることの証明は可能です。実際、法務省も「仮に夫婦別姓制度が導入された場合でも戸籍の意義(日本国民の親族的身分関係を登録・公証すること)は失われない」と公式に答弁しています。

さらに、「平成8年(1996年)の審議会答申で、別姓夫婦とその子も同一の戸籍に在籍するとされており、戸籍制度と両立が可能だ」と明言しています。要するに、法律的にも技術的にも夫婦別姓は戸籍制度でちゃんと扱えるのです。

保守的な論調の中には、「夫婦別姓を認めたらいずれ戸籍制度そのものが廃止されるのでは」というスリッパリー・スロープ論もあります。しかし選択的夫婦別姓はあくまで「姓を同じにするか別にするか夫婦が選べるようにしましょう」という制度です。戸籍そのものを無くすとか、家族関係の公的記録をやめるという話では断じてありません。自分が嫌だからといって出たらデタラメを並べ立てて他人に好みを押しつけるのは止めてくれのこのひと言です。