つまり、森友関連事件の不起訴処分の4か月後に部下の女性検事に対する事件を起こし、その半年後に検察審査会の不起訴不当議決があり、その後、再捜査と再度の不起訴処分が行われた。その期間というのは、性犯罪被害者の女性検事との間で、性犯罪被害をめぐってやり取りが行われていた最中だったのである。
女性検事は、仕事上、検事正と関わりを持たざるを得なかったが、北川元検事正からは被害を訴えないか何度も確認されていた。事件から9か月経った頃に、事件についての認識を問いただすと、北川元検事正から、
「あなたの同意があると思っていた」
「被害を表沙汰すれば私は絶対に生きていくことはできない」
「大スキャンダルとして大阪地検は組織として立ちゆかなくなる」
などと言ってきたと記者会見で述べている。
事件から9か月経った頃というのは2019年6月頃、まさに、森友関連事件の再捜査の最中だ。検事正としての事件決裁や捜査指揮がまともに行えただろうか。
検察における事件の決裁は、一般の事件であれば、副部長、部長決裁で済むことが多く、次席検事、ましてや検事正まで実質的に関わることは稀だ。しかし、この森友関連事件は、財務省側が被疑者であり、また、首相官邸も重大な関心を持っている事件だ。
もし仮に、検察審査会の不起訴不当議決を真剣に受け止め、起訴も視野に入れつつ積極的に再捜査を行い、起訴の方向で上級庁の了承を得ようとすれば、大阪地検のトップである検事正には、余程の覚悟と胆力が必要だったはずだ。自らが犯した性犯罪の問題で「心ここにあらず」の「北川検事正」に、そのようなことができたとは思えない。
北川氏の性犯罪の被害者である女性検事も、自身のブログで、
「北川被告人が事件後に決裁した事件、特に性犯罪事件が適正に決裁されていたかの検証をすべき」
と述べている(【検察は何のために、誰のためにあるのか。フジテレビ問題と根っこは同じなのに検察はなぜ何の取組みもしないのか。】)。