今回明らかになった「文書の欠落」は、国側が、前記のような「無理筋の理屈」まで持ち出して開示を免れようとしていたこととも関係している可能性がある。
財務省側が任意提出した交渉記録の一部が欠落していたことを認識した大阪地検特捜部側は、どう対応したのだろうか。政治関係者に言及している文書の多くが欠落しているということであれば、まさに国有地売却の重要な経緯に関する「罪証隠滅」そのものではないか。
公式記録としては廃棄されているとしても、個人のパソコン等に文書の電子データが残っている可能性もある。検察は、財務省側に徹底してデータの提出を求め、応じなければ強制捜査を検討するのが当然だ。しかし、大阪地検特捜部が、そのような捜査を行ったようには思えない。
雅子さんの開示請求に応じて「対象文書の特定情報」が開示され、最終的に、任意提出した文書の内容が明らかにされると、検察の捜査が杜撰だったこと、最初から「不起訴の結論ありき」で捜査をしていたことが露見してしまうので、何とかして開示を免れようとした。それが、前記のような「無理筋の理屈」まで使って開示請求の棄却を求めた理由ではないか。
そうだとすると、私が意見書に皮肉を込めて書いたことが、「図星」だったことになる。
今回開示された文書の内容と、その一部欠落は、森友学園問題に関する検察の捜査処理に対して重大な疑念を生じさせるものである。
「北川大阪地検検事正」は、森友学園問題にどう対応したのか
それに加え、もう一つ検察の捜査処分に対する疑念を深める要因がある。
そのような重大な疑念が生じている森友学園問題に関する一連の検察の捜査処分が行われた時期が、北川健太郎元大阪地検検事正による部下の女性検事に対する準強制性交事件が起きた時期と重なることだ。(北川元検事正はその後2024年に逮捕・起訴された。)
北川元検事正の在任期間は2018年3月~2019年11月、準強制性交事件の発生は2018年9月である。一方、森友学園問題の関連事件の不起訴処分は2018年5月、2019年3月15日に大阪第1検察審査会が不起訴になった佐川ら財務省職員10人について「不起訴不当」と議決し、大阪地検特捜部が再捜査を行い、同年8月9日、財務省職員10人について改めて不起訴処分とした。