雅子さんは、かねてから支援してくれていた田中真紀子氏に相談、真紀子氏から雅子さんを紹介された私が、控訴審向けの意見書作成を引き受けることになった。

実は、真紀子氏と私の付き合いも、その直前からだった。その年の6月に公刊した拙著【「単純化」という病 安倍政治が日本に残したもの】(朝日新書)を読んで共感したと言って、私の事務所に電話をかけてきてくれたのがその年の9月、それを契機に、拙著【歪んだ法に壊される日本】(KADOKAWA)で指摘した政治資金や選挙制度の問題についての勉強会を行うことになった。「自民党派閥政治資金パーティー裏金問題」の表面化を受け、12月8日に議員会館で共同記者会見を行い、11年ぶりに「真紀子節」が炸裂し、注目を集めた(【田中真紀子氏「国会議員になるのを差し控えて」 説明しない自民批判】)。

任意提出文書の特定による「将来の同種事件捜査への影響」などない

一審判決が認めた国の主張は、

対象文書の特定情報(行政文書の名称等の情報)により、本件各被疑事件の捜査について、財務省又は近畿財務局が、どのような内容や形式の行政文書を、どの程度の範囲(時間的、人的範囲等)で、どの程度の通数にわたり、東京地検又は大阪地検に任意提出したのかが推知されることとなる。これらの情報を分析することにより、本件各被疑事件の捜査における捜査手法や(いかなる内容又は形式の資料をいかなる方法で入手したか)や、捜査対象の範囲(任意提出された行政文書の内容、範囲、通数等)といった、具体的な捜査の内容や捜査機関の関心事項が推知されるおそれがある。

将来、本件各被疑事件と同種の刑事事件のみならず、行政機関が捜査対象となる刑事事件一般の捜査についても、そのような情報や分析を踏まえて、捜査手法や捜査対象の範囲といった具体的な捜査内容や捜査機関の関心事項が推知されるおそれがないとはいえない。

というものだった。それは、検察官時代、様々な検察捜査を経験してきた私にとって、全くあり得ない理屈だった。