赤木雅子さんの国との戦い
雅子さんは、俊夫さんの死後、財務省側に説明や資料の開示を求めたが、誠意ある対応がなかったため、2020年3月に、当時の財務省理財局長の佐川宣寿氏と国に対して、夫の死についての損害賠償を求める訴訟を提起し、民事訴訟の場での真相解明を求めた。
国側は当初、請求棄却を求めて争い、「赤木ファイル」等の文書は開示されたものの、改ざんに至る経緯が具体的に明らかになるものではなかった。その後、国は、2021年12月15日、一転して国家賠償請求を認め「認諾」を行ったために訴訟は終了した。
佐川氏に対する請求についても、一審判決は、佐川氏が改竄の方向性を決定づけたと認定した上で、「国家賠償法の規定に基づき公務員個人は賠償責任を負わない」と判断して請求を棄却した。高裁の判断も同様であり、最高裁で赤木さんの敗訴が確定した。
2021年8月、雅子さんは財務省と近畿財務局に対し、「(決裁文書改ざん問題の)調査に関する一切の文書」と「大阪地検特捜部に任意提出された資料」の開示を請求した。
同省は「特定事件の捜査機関の活動を明らかにすることになる」などとして不開示決定したので、同年10月29日、雅子さんは不開示決定の取り消しを求める訴訟を大阪地裁に起こしたが、2023年9月14日、大阪地方裁判所は雅子さんの請求を棄却した。
検察への任意提出文書の開示請求を阻んだ「国側の主張」
弁護団は、この開示請求訴訟には、さすがに負けることはないだろうと予測していたとのことだが、大阪地裁で出された一審判決はまさかの敗訴だった。
「検察に任意提出した文書が特定されると、将来の同種事件の捜査手法が知られることになる」
という被告の国側の主張を認めたものだった。
弁護団の控訴審に向けての打合せの中で、「検察捜査の実情に詳しい人に協力を求めることはできないか」という話が出た時、雅子さんの頭に「検察批判を繰り返してきた元特捜検事・郷原弁護士」のことが浮かんだという。