慢性化すると、当人の心身をむしばむだけでなく、相互の信頼関係を大きく損なうリスクがあります。

今回の知見は実務の現場にも応用可能です。

セックスに関するカウンセリングや夫婦療法の場面で、専門家(セラピストや医師など)は「望まない同意」の頻度や動機、そこから生じている感情を掘り下げることで、その裏にあるコミュニケーション不足やトラウマ、自己主張の難しさなどを見極めやすくなるでしょう。

場合によっては、相手の強要傾向や性的な痛み・トラウマの有無を慎重に確認し、必要ならば専門的な対処を検討することも大切です。

文化が異なる地域では感じ方や背景要因が変わる可能性がありますが、「欲求のないままセックスに合意する」現象はどこでも起こり得るものです。

フィンランドという環境下でのデータではありますが、「同意する理由と伝え方が、同じ行動を明と暗に分ける」というメッセージは、多くのカップルや支援者にとっても参考になるのではないでしょうか。

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元論文

Predictors of Perceived Positive and Negative Consequences of Sexual Compliance
https://doi.org/10.1080/0092623X.2025.2452844

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部