一方、「最初はそれほど欲求がなくても、パートナーに愛情を示したい」「関係を深めたい」といった前向きな理由(アプローチ動機)で同意した場合は、むしろプラスの効果を得るケースもあります。

今回の研究でも、相手との絆を深めたい・相手を喜ばせたいといった気持ちが動機となっている人ほど、「応じてみて良かった」「2人の関係が良好になった」といったポジティブな結果を得やすいことが分かりました。

量的調査のため直接的なコメントは掲載されていませんが、先行研究からは「相手が満足してくれると自分も嬉しい」「結果的に良い雰囲気になった」などのプラス面を感じる人も一定数いると推測されます。

“諸刃のYES”を味方につける条件

“諸刃のYES”を味方につける条件
“諸刃のYES”を味方につける条件 / Credit:Canva

この研究は、横断的な調査ということもあり因果関係を断定するわけではないものの、「望まない同意」がまさに「諸刃の剣」であることをデータから示唆しました。

重要なのは、同意の背後にある動機やパートナーとの関係性だといえます。

研究チームは「望まない同意」のポジティブな結果を最も強く予測したのはアプローチ動機で、ネガティブな結果の最も強い予測因子はパートナーによる強要経験と性的苦痛だった、と結論づけています。

男性と女性でわずかな差異はありましたが、個々の効果は小さいものでした。

これらの知見は、性的欲求のズレで悩むカップルや、そうしたケースに携わる臨床家が焦点を絞るうえで大いに役立つでしょう。

もし相手への思いやりや絆づくりといったプラス志向の理由であれば、片方がその時乗り気でなくても、それほど深刻な悪影響には至らず、むしろ2人の関係を良好にするきっかけとなり得ます。

しかし「断りづらい」「言い出せない」といった回避動機ばかりが原因で繰り返し応じている場合や、実質的にプレッシャーがあって強要されているような場合には注意が必要です。