12:00頃に、まずポルトガル国内で約5,380MWの電源脱落が発生し、これによって欧州全体の周波数が0.04Hz低下しました。その約30分後の12:32頃、スペイン国内で24,000MW規模の電源脱落が発生し、周波数はさらに0.16Hz低下しました。その後、10分程度で周波数は回復しました。
ただし、この時系列から「ポルトガルの系統崩壊がスペインの系統崩壊を引き起こした」と断定することはできません。あくまでも、先に停電が発生したのはポルトガルの系統であった可能性がある、という推定にすぎません。
この推定は、図2が示すように、ポルトガルの電力系統が地理的にも構造的にもヨーロッパ系統の末端に位置し、不安定になりやすい点を考慮しています。
3. ネット上のブログなどからの情報をまとめると
スペインの電力会社からは、停電に関する正式な原因の公表はまだありませんが、ブログ等を通じていくつかの有益な情報が公開されています。ここでは、その中から注目すべき3点を紹介します。
停電発生の約2時間前から、コンセントの電圧が約15V変動していたこれは家庭やオフィスの機器に影響を与えるレベルの変動であり、停電に先立つ系統の不安定化を示唆している可能性があります。 「誘導大気振動(induced atmospheric vibration)」による電圧の不均衡が原因とする見解これはポルトガルの電力会社RENによる発言に基づくもので、外的要因により電圧が揺らぎ、系統のバランスが崩れたことを示唆しています。 再生可能エネルギー比率の高さが停電範囲を拡大させた可能性火力や水力発電は大型の回転機を使用しており、回転系の慣性が大きいため、系統周波数の変動にもある程度耐えることができます。一方、太陽光や風力発電は、インバーターを介して直流から交流に変換する仕組みのため、周波数変動に対する耐性が低く、不安定時に停止しやすいという特性があります。このことが、停電の連鎖拡大を招いた可能性があります。
私は、これら3点はいずれも実際に発生していたと考えています。そして、これらの現象に加えて、交流系統における同期発電機の「同期ずれ」、いわゆる脱調(だっちょう)現象が発生していた可能性が高いと考えます。