図3は、停電事故が発生した当日とその翌日におけるスペインの総発電量、総需要、および連系線の融通差引を示したグラフです。

図3 停電発生日と翌日のスペイン各発電量(2025年4月28-29日)

また、図4は同じ日のポルトガルにおける同様のデータを示しています。スペインのデータは15分間隔、ポルトガルのデータは1時間間隔で取得されており、データの分解能には差があります。

図4 停電発生日と翌日のポルトガル各発電量(2025年4月28-29日)

図5は、停電事故の前後における電源系統の周波数を示しています。この周波数はドイツ国内のものであるとされており、スペインとフランスの連系線が接続されている間は、スペイン国内の周波数もドイツと同じになります。しかし、連系線が切断された状態では、スペイン国内の正確な周波数は把握できません。

周波数の変動としては、2回の低下が確認されており、12:00前後に小さな低下、12:30前後には大きな低下が発生しています。これについては後ほど詳しく説明します。

図5 停電事故発生時刻の電源周波数(2025年4月28日)

この3つのグラフから読み取れることを書きだします。

図3(スペイン)から読み取れること

事故発生後のデータについては、処理が正常に行われていない可能性があり、数値の正確性には疑問があります。おおまかな傾向を示すものとして捉えるべきです。

総発電量の減少 12:30〜14:30にかけて、総発電量は32,368MWから8,336MWへと約74%減少しました。 総需要の減少 12:30〜14:00にかけて、総需要(黒の実線)は25,172MWから10,632MWへと約58%減少しました。 フランスとの連系線の変化 10:00頃からフランスとの連系線の電力は変動(-1,600MW〜-300MW)を見せ、13:00には0MWになりましたが、その後はスペインが約1,000MWの受電を受けています。 太陽光発電の不自然な数値 11:45〜13:00にかけて、太陽光発電量は19,696MWから6,472MWに減少。その後もゆるやかに減少していますが、21:00時点で3,800MWという数値は、この時間帯にしては多すぎる印象があります。比較として、前週の同時刻では592MWでした。この不一致は、スペイン国内における太陽光発電の出力推定方法に原因があると考えられます。大規模メガソーラーはリアルタイムにデータが取得されますが、小規模な屋根上太陽光などは日照量などからの推定であり、計算機出力全体の精度に限界がある可能性があります。

図4(ポルトガル)から読み取れること

※ ポルトガルのデータは1時間ごとの値です。

総発電量の急減 12:00時点で5,440MWから3,020MWに減少し、13:00には95MWにまで低下しています。 総需要の減少12:00に5,747MWから3,285MWに、13:00には94MWにまで減少しています。 スペインとの連系の断絶 12:00以降、スペインとの連系線による電力融通は0になり、その後もほとんど流れていません。

図5(系統周波数)から読み取れること

最初の周波数低下 12:00:30および12:01:35に49.96Hzまで低下し、その後30分ほどかけて回復。 2回目の低下 12:33:00に49.97Hzを下回り、12:33:40には最低値の49.84Hzを記録。 回復12:43:46に50.00Hzまで回復。

想定される状況の分析