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1. イベリア半島停電の概要

2025年4月28日12:30すぎ(スペイン時間)イベリア半島にある、スペインとポルトガルが広域停電になりました。公表された資料や、需給のデータから一部想定も含めて分析してみたいと思います。データはENTSO-E(欧州送電系統運用者ネットワーク)が公開しているデータを用います。

図1は、停電が発生する1週間前、4月21日におけるスペインの各発電源ごとの発電量、総需要、連系線を通じた融通電力量を示しています。日本と同様に、日中は太陽光発電による発電量が大きく、おおよそ9:00~18:45の時間帯では、総発電量が黒の実線で示した総需要を上回っています。この時間帯は、黒の点線で示した外国との連系線の電力量(融通差引)がマイナスとなっており、余剰電力を海外に輸出していることを意味します。

ここでの「融通差引」とは、複数ある連系線を通じた電力の輸出入の合計値を指します。スペインは、ポルトガル、フランス、モロッコとそれぞれ複数の送電線で連系しており、そのすべての送電線における電力量を合計したものです。

図1 停電発生の1週間前のスペイン各発電量(2025年4月21日)

図2は、ヨーロッパにおける国際間の主な連系系統の概要を示したものです。地形の制約により、スペインおよびポルトガルは、ヨーロッパ大陸の主要な電力系統とはフランスを介してのみ連系しています。連系線は複数本存在しますが、フランス〜ドイツ間のように複数のループ構成にはなっていません。

また、ポルトガル〜スペイン間も複数の連系線で接続されていますが、全体の構成は図2のとおりです。なお、スペインはモロッコとも連系していますが、その容量が小さいため、図では省略しています。

図2 停電発生の1週間前のスペイン各発電量(2025年4月21日)

2. 停電事故発生当日の発電量のグラフから