下段はマグニフィセント7株価指数が4月前半のショック安から、後半は立ち直りつつあることを示していますが、急ぎすぎでしょう。
トランプがとくに中国に対して懲罰的な高率関税を課せば、中国もこれに対抗してマグニフィセント7から輸入する製商品に高率関税を課してくるはずです。
マグニフィセント7の時価総額がS&P500の時価総額に占める比率は、次のグラフでご覧いただけるように4月上旬のショック安時点で27.6%まで下がりました。
直近では30%前後まで回復していると思いますが、今後海外生産比率や海外売上比率の高さを織りこむと、時価総額シェアはもっと下がるでしょう。
つまり2024年秋までの米株上昇を牽引する壮麗なパフォーマンスとは打って変わって、今後は下落が続く米株の足を引っ張る悪性腫瘍になってしまうということです。
さて、なぜ米株は下げつづけるかについての外部要因に移りましょう。
ベーシス取引が招く全面安
金利も低く、これからも諸外国通貨に比べて安くなり続けると予想されていた日本円を借りて、借りた日本円でもっと利回りの高い国々の金融資産を買って運用することを円キャリー取引と呼ぶことはご存じのことと思います。
まず円を借りてその円を売って海外通貨建ての金融資産を買い、あとで借りて売っていた日本円を買い戻すのがネガティブキャリーなら、そのとき買っておいた金融資産をあとから売るポジティブキャリーのほうは、どこでどんな資産を運用していたのでしょうか。
これはもう、市場規模から見ても、ほとんどが米ドルで米国債を買って運用するしかないと想像がつきます。
米国債の現物と先物のあいだにできる数ベーシスポイント(1ベーシスポイントは1%の100分の1)の差を利用して、100倍に達することもある大きなレバレッジを掛けて利ザヤを取る手法です。
米株が2月半ばに大天井をつけてから4月上旬のショック安にいたる約2ヵ月間、ポジティブキャリーで米国債を運用していた人たちの大半は、株安→リスクオフ(危険回避)→国債価格上昇(金利下落)に賭けていました。