そんなバカな話はありません。国も企業も個人世帯も、稼ぎより多くの支出をしているから世界中に借用証を乱発しなければならないだけです。

国家財政も経常収支もトントンにして、主要貿易相手国の通貨や国債をアメリカも持っておけば、赤字を出さずに済むというだけの話です。でも、実際には借用証を乱発してその場しのぎを続けています。

毎年、身の程知らずに稼ぎより高い生活水準を享受してきた咎めは、慢性的な経常赤字と巨大な氷山のごとき累積債務というかたちでアメリカ経済を圧迫しています。

そして、今回リスクオフ資産であるはずの米国債が株価暴落の最中に売られたのは、次の図表右側のグラフにあるとおり、たしかに外国勢による売却という要因が大きかったのも事実です。

外国勢が保有している米国債総額は、4月2日「解放の日」の約8兆7000億ドルから、ほぼ1ヵ月で約7兆2500億ドルに激減しました。

ただ、外国人売りはあくまでも表面に出ている氷山の一角に過ぎません。最大の問題は近年では毎年のように1兆ドル以上出している財政赤字であり、ほとんど同規模の経常赤字なのです。

そして、今年2025年はコロナ騒動の2020年にべら棒な規模で発行した5年債の償還期限を迎えるので、これまで経験したこともないほど巨額の既発債を償還するための借換え債の大増発をしなければならない年なのです。

なお、下段のグラフでは今年1年をなんとかやり過ごせば、来年以降はそれほど巨額の借換え債発行をしなくても済むように見えます。しかし、それはまったく机上の空論です。このグラフには、すでに発行済みで流通中の米国債の償還期限別の残高が示されているだけです。

今年償還予定の国債を額面で買い戻す資金がないからこそ、大量の借換え債を発行し、その借換え債の償還期限には、また巨額の借換え債の発行を余儀なくされるでしょう。

借換え債の増発額が多くなるほど高金利で需要を喚起する必要があるので、償還するまでに必要となる毎年の利払い費負担は元本の伸び方よりはるかに急激に増えていきます。