また「就業者に占める公務員の割合」は、スウェーデンでは当時も30%を超えていたが、日本では5%に届いていなかった上に、まだ多すぎるといったマスコミレベルでの批判が続いていた。

しかし、図2で分かるように、比較対照とした先進諸国と比べても、日本の公務員比率は格段に低い状態にあった。そして、この公務員の比率の差は2021年でも変わっていない。ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデンはいずれも30%前後を占めていて、日本の4.5%とは完全に異質的である。

図2 就業者に占める公務員の割合(出典)金子、1995:27.

災害対策がうまくいかなかった理由は「公務員比率」の低さ

このOECD加盟の38カ国中最低の「公務員比率」をさらに「行政改革」として推し進めた結果、1995年の阪神淡路大震災、2011年東北地方太平洋沖地震、そして2020年からの新型コロナウィルス感染などで災害対応が不十分であったのは、自治体職員が全く不足していたからであろう。

台湾・台北市での「国際福祉シンポジウム」での講演

たまたま『都市高齢社会と地域福祉』が機縁になって、94年に台湾の「国立政治大学」主催の「国際福祉シンポジウム」に招待されたので、その本とともに、図1や図2のような資料も使って、「北欧のモデルをアジアで称賛しても意味がない」、「台湾独自の血縁関係支援モデルや日本では地域福祉の方が可能性に富む」という発表をしたら、会場での参加者に賛同していただけたという記憶がある(Isamu ,1995:397-411)。

「福祉と伝統文化」のモデル

より詳しくいえば、図3のような「福祉と伝統文化」のモデルを作り、北欧での福祉は高い「国民負担率」を前提とした「国、自治体」主導である。

しかし、アジアのうち中国と台湾では、低い「国民負担率」のまま、困窮者を助けるのは「血縁」を軸とした長い歴史をもつ「宗族」であったことを指摘した。「宗族」とは本家分家を合せた一族なのであるが、「同一祖先の父系の同族集団」を指すことが多い。