たとえば、10万人都市では市長は1人、助役(副市長)も1人だが、200万都市になると、市長は1人でも副市長は3人に増える。予算規模は全く違うし、責任の所在も両都市では大きく異なってくる。これらへの配慮がなければ、比較自体が成立し得ない。

国民負担率が全く異なる

さらに今でこそスウェーデン消費税率25%に対して日本のそれは10%であるが、1995年当時の日本の消費税率は3%、97年には5%であった。

当時は所得税でも大きな違いがあって、消費税と所得税その他の合計である「国民負担率」では、日本の38%程度に対して、たとえばスウェーデンでは74%を超えていた(図1)。

図1 国民負担率の国際比較(出典)金子、1995:165.

日本の2倍の「国民負担率」

当時も今も北欧の「国民負担率」の高さは変わらないが、何しろ日本とは2倍もの「国民負担率」なのだから、手厚い福祉、介護、看護にもたくさんの国家予算が投入されることは誰でも分かる。その情報を示さずに、いくら「北欧の老人対策は素晴らしいが、日本のそれはだめ」と言ったところで、日本では何も変わらないと結論した。

講義や講演会でもそのように話をしたところ、北欧の「素晴らしい老人対策」の背後に日本よりも2倍の「国民負担率」があることに気がついてもらえた。

日本では75%の負担を受け入れない

その後の問いかけは、「あなた方は収入の75%の負担を受け入れますか」になるのだが、ほとんどの学生も講演会参加者も「それは拒否する」という回答で一致するのが通例だったので、そこからの処方箋は「北欧の半分程度の国民負担率」で可能なかぎり「福祉、介護、看護」のサービスを高めることに落ち着いた。

財務省の資料によれば、2024年の「国民負担率」は45.1%であり、25年度のそれは46.2%とされているが、「財政赤字を加えると、48.8%に高まる見通しである。

2020年度で見ると、日本は47.9%だったが、デンマークは65.9%、フィンランドは59.7%、ノルウェーが53.4%、そしてスウェーデンでは54.5%にまで低下している。これは収入の8割近い「負担」をスウェーデン国民が拒否したからに他ならない。

公務員比率では日本が最低である