実際、エミレーツ移転以来、アーセナルはプレミアリーグを制していない。しかし、収容人数が38,500人から60,704人と約1.5倍増えたことにより、興行収入や物販収入が増加し、長期的にクラブの財政基盤を強化することに繋がった。

ハイベリーはアーセナルサポーターから愛され、移転には一部から反対の声もあったが、エミレーツは新たな歴史を刻む場として受け入れられた。新スタジアム建設による収益を背景に、アーセナルは再びビッグクラブとして競争力を高め、今2024/25シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(CL)では4強に進出した。

解体されたハイベリーの一部は保存され、「ハイベリー・スクエア」という名の住宅地として再開発された。ピッチがあった部分は中庭となり、スタンド部分をマンションに改築。歴史を残す工夫が施されている。

カンプ・デ・レス・コルツ(1922-1960s)

所在地:スペイン、バルセロナ(バルセロナが使用)

現在、建て替え工事中のバルセロナのホームスタジアム「カンプ・ノウ」は、日本最大手の設計会社「日建設計」がコンペに当選し、設計に携わったことでも話題となった。しかし肝心の工期は延びに延び、当初2024/25シーズン途中から使用できるはずだったが、2026/27シーズン開幕に間に合うかも微妙な状況となっている。

カタルーニャ人にとっては“聖地”とされている新カンプ・ノウが完成すれば、収容人数10万5,000人を誇る巨大スタジアムとなるが、それまでバルセロナは1992年バルセロナ五輪のメイン会場で、一時期エスパニョール(1996-2009)もホームとしていた、収容人員60,713人の「エスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニス」を使用している。

そんなカンプ・ノウ以前のバルセロナのホームとして使用されていたのが、カンプ・デ・レス・コルツだ。現在カンプ・ノウがあるラス・コルツ区に、わずか3か月という工期で建設され1922年に開場。当初の収容人員は25,000人だったが、拡張工事を繰り返し、その規模を60,000人にまで増やした。