2017年に、アトレティコが選手とサポーターの思いが詰まったこのスタジアムを去った要因は、老朽化だけではない。
2020年五輪招致で東京とイスタンブールが立候補する中、マドリードは本命視されながら、2013年のIOC(国際オリンピック委員会)総会での1度目の投票でイスタンブールに敗れ、結局、開催地は東京に決定。マドリードは2012年大会、2016年大会に続く“3連敗”で、これを最後に五輪招致から手を引くことになる。
これにより元々「ラ・ペイネタ」という陸上競技場があったメイン会場の建設予定地がポッカリと空いてしまった。そのため当時のマドリード市長と、アトレティコのエンリケ・セレソ会長が新スタジアム建設計画に同意し、2016年、ラ・ペイネタを取り壊した上で、収容人数68,456人の新スタジアム「エスタディオ・メトロポリターノ」が建設され、2017年から使用が開始されたのだ。
五輪招致に失敗したことで新スタジアムからは陸上トラックも排除され、アトレティコのディエゴ・シメオネ監督も「圧力鍋」に例えるような熱狂空間とすることに成功。チームも期待に応え、2020/21シーズンには本拠地移転後リーグ初優勝をもたらす。ちなみに、新スタジアムの屋根を設置したのは日本企業の太陽工業だ。
ビセンテ・カルデロンはその役割を終えた後、映画やドラマのロケ地としても使用され、2019年から解体が始まり、2020年までに完全に取り壊された。現在、跡地には住宅地や、さらに「アトレティコ・マドリード公園」が新設され、市民の憩いの場となっている。

メイン・ロード(1923-2003)
所在地:イギリス、マンチェスター(マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッドが使用)
今や同地区のビッグクラブ、マンチェスター・ユナイテッドの存在感を超えてしまった感のあるマンチェスター・シティ。しかし、総タイトル数はユナイテッドの半分以下であり、これを超えるためには、今のチーム力を維持できたとしても数十年かかるだろう。