結果の概要:消費税を5%に減税すると、年間赤字は50~65兆円規模に拡大し、10年間で国債残高は約600~700兆円増加すると見込まれます。2035年時点の累積国債残高は約1,980兆円となり、GDP比ではおよそ330%前後に達する計算です(シナリオ1よりは低いものの、現状よりは悪化)。インフレ率はシナリオ1と比べ緩やかで、2030年頃に5~7%、2033年以降はほぼ年10%前後で推移する見通しです。これは高インフレではありますが、年20~30%に達していたシナリオ1よりはマシな水準と言えます。ただし物価上昇率が着実に高まっている点には変わりなく、2030年代に入る頃には日本銀行も政策対応を迫られるでしょう。

金利と通貨信認への影響: シナリオ2ではシナリオ1ほど急激ではないにせよ、財政悪化とインフレ率上昇の圧力が蓄積します。消費税5%への減税は一時的に物価を約2%程度押し下げる効果があります(2025年のインフレ率が想定より低めになっているのはそのためです)が、結局は国債増発による通貨供給増で徐々に打ち消され、数年遅れて物価は上昇トレンドに転じます。2030年前後にインフレ率が5%を超え始めると、名目金利も市場圧力で上昇する可能性が高まります。仮に日銀がそれまで金利を抑制していても、インフレ率が目標(2%)を大幅に超えて定着すれば、金融引き締め(利上げ)に動かざるを得なくなるでしょう。その場合、政府の債務利払い負担は増加し、赤字がさらに悪化→追加国債発行→通貨安・インフレ進行という二次的な悪循環が生じ得ます。

もっとも、本シナリオのような**「赤字GDP比8~10%程度」の状態は、即座にハイパーインフレに陥る水準ではないとも言えます。日本の事例では、COVID-19対応でGDP比10%以上の財政赤字が発生した2020年度(債務残高対GDP261%)から現在までの数年間は、幸いにもインフレの顕在化は限定的でした。