しかしそれは同時期に日銀が大規模緩和で国債を買い支え、金利と通貨価値の安定を図った特殊事情があります。「減税継続による恒常的な赤字拡大」は一時的なコロナ対策とは異なり、マーケットもいずれ持続不能と判断するでしょう。仮に2030年代前半でインフレ率が10%前後に高進してきた場合、国民や投資家の間で「このままでは将来、紙幣の価値が更に目減りする」との不安が広がります。それが通貨信認の低下であり、具体的には預金の取り付けや日本国債離れ、資本流出(円売り)といった形で表面化する可能性があります

その臨界点がいつ訪れるか正確には予測困難ですが、シナリオ2の場合、シナリオ1より猶予は長いものの2030年代後半(開始後15~20年)には危機的状況に差し掛かるリスクが高まると考えられます。上表では2035年時点でインフレ率12%に達していますが、仮にこの傾向がさらに進めば2040年前後には年数十%規模のインフレも現実味を帯びてきます。したがって、本シナリオでは「財政破綻 or ハイパーインフレ」まで約15~20年程度と試算されます。ただしこれは何も対策を講じなかった場合であり、実際にはこれほどの長期間、政府・日銀が手をこまねいている可能性は低いでしょう。より現実的には、インフレ率が数%台に乗った段階(2020年代後半~2030年頃)で何らかの増税・歳出見直しに舵を切るか、あるいは債務貨幣化の道を選ぶかといった 「財政の岐路」に立たされると考えられます

シナリオ3:消費税は据え置き+「食料品のみ消費税ゼロ」とした場合

想定: 2025年から消費税の軽減税率を拡大し、食料品(生鮮食品・加工食品など生活必需的な飲食料品)に対する消費税を非課税(0%)とする。他の品目・サービスは現行どおり標準税率10%を維持。社会保障費等の歳出カットなし。政策による税収減は全て追加国債で賄う。 日本では2019年の消費税10%への引き上げ時に、食料品等に軽減税率8%が適用されています。本シナリオはその軽減税率をさらに踏み込み、食料品の税率をゼロ(免税)にするケースです。