日本のケースでも、消費税ゼロで毎年60~80兆円もの追加国債を日銀や国内金融機関が引き受ければ、市場には巨額の余剰資金が供給され、円の信認低下から為替レートの暴落(円安進行)と輸入物価の高騰を招くでしょう。実際、現在でも物価上昇の一因は円安によるエネルギー・食料の輸入価格高です。
本シナリオでは、消費税廃止直後こそ税抜き価格の低下で一時的に物価上昇率が下がる可能性があります(上表2025年のインフレ率は1.0%に低下)が、その後は「国債増発→通貨価値の希薄化→円安→輸入インフレ」という悪循環が回転を始め、数年遅れで顕在化すると考えられます。
2030年前後からインフレ率が二桁に乗せているのは、この悪循環によるものです。 インフレ率がこれほど上昇すれば、金融政策当局(日銀)も長く傍観はできません。金利を人為的に低く抑えていた政策を転換し、市場金利を上昇容認あるいは利上げに踏み切れば、国債の利払い費が爆発的に増え、財政赤字はさらに拡大します。実際、2024年度時点でも国債費に27兆円(歳出の24%)を要しており長期金利上昇は財政を一層圧迫します。
しかし仮に政府・日銀がインフレ抑制より国債維持を優先して金利を抑え込めば、その間にも実質金利マイナスで通貨価値は下落し続け、さらなるインフレ・通貨安を招きます。つまり、金利を上げても下げても袋小路であり、最終的には通貨への信頼喪失という形で清算されるでしょう。
ハイパーインフレが進行すると、国民や投資家はもはや日本円や国債を安全と見なさなくなり、資産逃避が加速します。急激な預金引き出しや国債売却が起これば、日本銀行が事実上それをすべて引き受けて紙幣を刷る以外に手立てがなくなり、結果的に歯止めの利かない物価高騰(財政破綻)に陥る可能性が高まります。
破綻までの推定期間: 上記試算では、2030年代前半(シナリオ開始から約5~10年程度)でインフレ率が制御不能な域に達し、財政が事実上破綻状態に陥ると予測されます。2032~2033年頃にはインフレ率20~25%と年々急加速しており、この時点で既に通貨への信頼は大きく損なわれているでしょう。歴史的なハイパーインフレの定義(50%/月)には達していないものの、インフレ率が毎年跳ね上がる状況自体が信用崩壊の兆候です。一度こうした加速が始まると、翌年にはさらに激しい物価高(例えば年50%、100%…)に発展しうるため、2035年前後がタイムリミットと考えるべきです。従って「消費税ゼロ・歳出そのまま・国債増発頼み」の路線では、約10年以内に日本経済はハイパーインフレ的な混乱に陥る可能性が高いというのが本シナリオの結論です。
シナリオ2:消費税を5%へ減税した場合