シナリオ1: 消費税を2025年に完全廃止(税率0%) シナリオ2: 消費税を5%へ5ポイント引き下げ(現行10%→5%) シナリオ3: 消費税は現行どおりだが「食品のみ非課税」(食料品等の税率を0%、それ以外は10%)

いずれのケースも、社会保障費など歳出は現行水準を維持し削減しないものとします。また減収分を補う新たな税源導入や他の増税は行わず、赤字拡大分は全て追加国債の発行で賄う前提です。ハイパーインフレの明確な数値基準はありませんが、ここではインフレ率が年々加速的に上昇していく状態をハイパーインフレの兆候とみなし、その発現時期を探ります (※一般には月間インフレ率50%以上がハイパーインフレの目安とされます)。以下、それぞれのシナリオごとに、財政収支・債務残高の推移、インフレ率・金利動向の見通し、通貨信認の変化による悪化シナリオとそのタイミングについて詳しく見ていきます。

シナリオ1:消費税を2025年に「ゼロ」にした場合

想定: 2025年から消費税収約23兆円が消失(税率10%→0%)

社会保障費等の歳出は削減せず、他の歳入増も無し。年間23兆円規模の歳入欠陥はすべて新規国債で賄われる。 まず消費税廃止による直接の影響ですが、歳入は現在の約70兆円から一挙に約47兆円へ減少します。歳出は2024年度で112兆円規模のため、単純計算で財政赤字は年間60兆円台に跳ね上がります(現在は赤字約35兆円)。その結果、国債依存度(歳入に占める国債の割合)は約60%近くに達し、政府支出の半分以上を借金で賄う事態になります。これは非常に異例で、現状ですら約30%の国債依存度に留まっていることを踏まえると、いかに極端な状況かが分かります。

以下の表に、2025年以降このシナリオ1を継続した場合の主要財政指標の推計推移を示します(歳入・歳出・赤字・国債残高は兆円単位、インフレ率は年度ごとの消費者物価上昇率を示す)。なお歳出は社会保障費の自然増などを反映して年2%程度緩やかに増加すると仮定し、他の税収(所得税・法人税など)は名目GDP成長に応じて年2%程度伸びるものとしています。ただし消費税廃止で可処分所得が増える効果や景気刺激効果は限定的と仮定し(※現実には多少の消費押上げ効果が見込まれますが試算では保守的に考慮外)、金利上昇による利払い増加も当初は日銀の金融緩和維持により抑制される前提です。インフレ率は、消費税廃止による物価押下げ効果で2025年は一時的に低下するものの、その後は国債の大量発行に伴う通貨供給増加や円安進行により加速していくシナリオを想定しました。