もう一つ、絵文字の役割についての示唆も興味深い点です。
絵文字というと一見、喜怒哀楽を直接表す感情そのもののように思われます。
しかし研究チームによれば、絵文字多用派の投稿から見られた感情表現の傾向はごく控えめで、必ずしも絵文字はストレートに感情を伝えているわけではないとのことです。
では人々は絵文字を何のために使っているのか?
その答えの一端として、著者らは「ネガティブな内容を和らげるために絵文字を使っている可能性がある」と述べています。
例えば「あなたとはもう二度と一緒に行かないからね(ニッコリ)」といった具合に、本来きつく聞こえる否定的なセリフでも、後ろに冗談めかした絵文字を付け足すことでトゲを抜く効果が期待できます。
確かに、絵文字には文章のトーンを調整する「緩衝材」のような役割があると日々実感するところではないでしょうか。
研究では絵文字をよく使う人は否定表現も多い傾向があり、さらに絵文字多用派は開放性が低いことがわかりました。
そのため否定的な言い回しに絵文字を添えて柔らかく伝える――このようなコミュニケーション術が背景にあるのかもしれません。
本研究は主に英語圏の若者(大学生)のデータに基づいており、文化や年代が異なれば絵文字の使われ方も変わってくる可能性があります。
著者らも「我々のサンプルは女性が多数を占めた。将来的には性別や文化による絵文字使用の違いについても研究が必要だ」と述べ、結果の一般化には慎重さを示しています。
実際、日本語圏では顔文字やスタンプ文化も根付いており、英語の絵文字とはまた違ったコミュニケーション習慣があります。
こうした違いが性格特性との関連に影響するのか、今後さらに研究が進められるでしょう。
では、この研究結果にはどのような意味や活用が考えられるでしょうか。
例えば、人材採用やマーケティングの分野では、SNS上の言動からその人のパーソナリティを推測する試みが行われ始めています。