興味深いのは、絵文字多用派はテキスト上で豊かな感情表現をしているようでいて、実は文章そのものの語彙はシンプルになる傾向がうかがえる点です。
これは「文章の一部を絵文字で置き換えている」ことを示唆しているのかもしれません。
絵文字が単なる飾りではなく言葉の代わりとして機能し始めていることを物語る結果とも言えるでしょう。
絵文字は言葉の省エネ──保守派のコミュ術?

この研究から、「絵文字の多用」と「開放性の低さ(新しいものより慣れ親しんだものを好む傾向)」との関連が示されました。
ではなぜこうした傾向が生まれるのでしょうか?
筆者らは明確な因果関係までは断定していませんが、いくつか考えられる理由や示唆を述べています。
まず考えられるのは、絵文字という表現手段自体の性質です。
絵文字は直感的で分かりやすく、世界共通で通じやすい「具体的」なシンボルです。
高い想像力や抽象的な表現力を駆使しなくても、ニコニコマーク一つで「嬉しい気持ち」を手軽に伝えることができます。
新しい言葉をひねり出さなくても既存のアイコンから選ぶだけなので、ある意味「手堅い」コミュニケーションとも言えます。
こうした特徴から、普段から新奇な表現よりもお馴染みのやり方を好む人(開放性の低い人)は、文章を書く際にも絵文字という安定したツールに頼りがちなのではないか――そんな仮説が考えられます。
逆に開放性が高い人は、文章だけでユーモアを表現したり独自の言い回しを工夫したりする傾向があり、絵文字にあまり頼らないのかもしれません。
実際、本研究とは別に「開放性が高い人ほど長めの単語や専門的な語彙を使う」といった報告もあります。
絵文字多用派は語彙の豊かさがやや低い傾向があったという今回の結果とも照らし合わせると、開放性の高低で言語スタイルが異なる可能性が考えられます。