つまり同じ45ニュートンという力で割れたものの、それまでに必要な仕事量は横置きのほうが多く必要だったのです。
次に動的落下試験では、専用の装置により複数の卵を常に一定の向きで同時に落下させ、割れるかどうかを比較しました。
高さはごく低い8、9、10ミリメートル(約1センチ弱)から硬い床面に落とす条件で、合計180個(各高さごとに60個)の鶏卵を使っています。
一見すると非常に低い高さですが、卵にとっては割れるかどうかの境界が現れる絶妙な高さです。
試験の結果、縦向きに落とした卵は横向きよりもずっと低い高さで割れ始めることが明らかになりました。
例えば高さ8mmからの落下では、縦向きの卵は半数以上がひび割れてしまいました(尖ったほうを下にしても、丸い底を下にしても結果に差はありませんでした)。
これに対し横向きの卵で8mmの高さから割れたものは1割未満しかありませんでした。
わずかな高さの違いですが、横向きでは割れないのに縦向きでは割れてしまうという統計的に有意な差が確認されたのです。
このように横向きの卵は落下衝撃に対する「実用上の強さ」(割れにくさ)で縦向きよりも優れているといえます。
また研究では卵が割れるまでに吸収したエネルギーを計算したところ、静的圧縮でも動的落下でも、横向きが縦向きよりも約30 %大きいことがわかりました。
ちなみに実験後の卵はスタッフ(の犬)が美味しく頂いたとのこと。
しなやかさこそ真の強さ

では、なぜ横向きの卵は縦向きより割れにくいのでしょうか?
ポイントは「力の受け止め方」の違いにあります。
縦向きの卵は、一方向から力が加わると殻全体ががっちり踏ん張って硬く抵抗しますが、その反面急な衝撃には脆い性質があります。
硬くて変形しない分、ひとたび限界を超える力がかかるとパキッと割れてしまうのです。