問題はその執着がコントロール不能となり、相手の意思や安全を無視し始めるときです。
現実にはストーカー犯罪も後を絶ちません。
日本では2020年にストーカー相談が2万件以上も寄せられており、女性の約10人に1人が一生のうちにストーカー被害を経験するとされています。
愛の名の下に暴走する執着は、当人にとっても社会にとっても大きな不幸です。
では、なぜ一部の人はここまで極端な執着に陥ってしまうのか?
この問いに対する答えとして浮かび上がってきたのが、冒頭で触れた「ストーカー遺伝子」の可能性です。
まず最初に紹介するのは、愛のホルモン「オキシトシン」にかかわる遺伝子です。
なぜ愛のホルモンがストーカーに関連するのでしょうか?
2:愛のホルモンはストーカー遺伝子になりえる

「愛のホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、人の信頼感や共感力を高め、人間関係の絆を強める作用で知られています。
実際、恋に落ちたばかりのカップルでは血中オキシトシン濃度がぐんと上昇することが観察されています。
恋人同士が見つめ合ったりハグをすると幸福感に満たされるのも、このホルモンのおかげかもしれません。
しかし、オキシトシンには意外な“裏の顔”もあります。
最近の研究によれば、オキシトシンは状況次第で人に優しい行動を促すだけでなく、逆に攻撃的な振る舞いを引き起こす場合もあるのです。
愛情ホルモンで人が穏やかになるどころか、時に嫉妬や執着心が増幅されてしまうと聞けば驚きかもしれません。
しかし特定の相手に愛という特別な感情を維持し続けるには「執着心」が必要であり、愛と執着はコインの裏表のような存在でもあるのです。
台湾の精神科医、Chuang Jie-Yu氏らの2020年の研究は、まさにこの「愛のホルモン」の光と影に切り込みました。
彼らによると、恋愛関係がこじれたときに現れやすい危険な行動パターンとして、