ストーカー行為は「しつこい嫌がらせ」程度に思われがちですが、その背後には深刻な暴力リスクが潜んでいます。

米国の調査では、ストーカー被害者の約3分の2(67%)が「自分は殺されるかもしれない、または身体的に害を加えられるかもしれない」という強い恐怖を感じていたことが報告されています。

これは、ストーキング行為が単なる迷惑ではなく被害者の生命を脅かしうると多くの人が直感的に感じ取っていることを示しています。

実際、ストーカー被害はしばしば重大犯罪の前兆となります。

とりわけ元交際相手や配偶者など親密な関係にある加害者によるストーキングは、後に深刻な暴力(ドメスティックバイオレンスや殺人)に発展する危険性が高いことが研究で示されています。

米国で行われた大規模調査では、親密なパートナーによる殺人未遂・殺人事件の被害女性のうち、殺人未遂の85%、殺人の76%がその事件前12か月間にストーキング被害を経験していたことが明らかになりました。

さらに、それらの被害者の多く(半数近く)は事件前にストーカー被害を警察に報告していたにもかかわらず悲劇を防げなかったという指摘もあります。

この調査から、ストーカー被害を甘く見て適切に対処しないことが致命的な結果につながりうる現実が浮かび上がります。

ストーカー被害と殺人リスクの関連性は国際的にも認識が深まっています。

あるメタ分析研究では、ストーキング被害があると親密パートナー間の殺人リスクが3倍に高まると報告されています。

英国でも「ストーカー被害を軽視した結果、防げたはずの殺人が起きた」とされる事件が注目を集め、警察の責任が問われました。

被害者に「被害届の乱発だ」として罰金を科した後に殺害されてしまったケースや、繰り返し警告を発しながら実効性のある措置を取らず被害者が殺害されたケースなどが報道されています。

これらは極端な事例に思えるかもしれませんが、日常的にもストーカー被害者は常に殺傷の不安と隣り合わせに暮らしているのです。