英国でも状況は深刻で、2017年の質的研究では被害者が証拠不足を理由に門前払いされたり、形式的な危険度評価しか行われなかったという証言が多く寄せられました。

さらに、2023年に発表された警察監察機関の報告書によれば、ストーキングの通報事案の約21%が適切に記録すらされておらず、リスク評価ツールも現場で十分に活用されていませんでした。

証拠収集の遅れも指摘され、これらの問題に対処するために同報告書では29項目もの改善勧告が提示されています。

デンマークの最新調査(2024年)でも、被害者の67%が警察から十分な説明を受けられなかったと感じており、接近禁止命令を発付できたケースは全体の2割未満にとどまりました。

法律整備が進んだ国でさえ、被害者はなぜもっと保護してくれないのかという思いを抱えています。

日本においても警察対応の消極さが指摘されており、内閣府の調査では被害者支援窓口の約3割が警察との情報共有が不十分と回答しました。

また、警察の現場対応を分析した研究では、相談を受けたケースの約半数が被害者への防犯指導に留まり、警告や逮捕といった踏み込んだ措置はわずか16%に過ぎませんでした。

被害者たちはこうした対応を実効性に欠けると評価しており、形だけの対応では問題が解決しないことを痛感しています。

さらに、警察庁の委託研究では、加害者に警告を出した後のフォローアップが行われないために再度つきまとい行為が繰り返されるケースがあると指摘されています。

1999年の桶川事件でも、警察の捜査怠慢が被害拡大を招いたとして遺族が国家賠償訴訟を起こし、警察の過失が認定される事態となりました。

これらの事例から浮かび上がるのは、被害者の訴えを軽視し、法制度の限界を言い訳に対応を怠るというパターンです。

ストーカー被害を軽視した対応は、単に被害者の不安を募らせるだけでなく、最悪の場合は命に関わる結果に繋がります。